第14話[約束]

あの絵本を貰った日から数ヶ月。
冬が近付いてきた。
私が嫌いな季節―
だけど、今年は違った。
シロちゃんが傍にいてくれるから―
それだけで嬉しかった。
でも、気になっていることがあった。
シロちゃんがおかしい―
冬が近付いてきてるからか、体調を崩しているらしく、会えない日が多かった。
会っても、少し元気がない感じがした。
どうしたの?と尋ねると、彼は歌を口ずさんだ。


花の声が聞こえない日がある
それは僕にとって世界が終わるような気がした
花は手放せない
今日もその花に愛という名の水をやる
もう聞こえない日が無い様に―


シロちゃんがくれた絵本、『I believe You』の中に出てくる詩であり、この国に伝わる歌だった。
何故口ずさむのか分からなかった。
だけど、これを歌い終わると、必ず微笑を浮かべた。
その意味は、どれだけ年月が経っても分からなかった。


だが、彼がおかしかった理由は、それから数ヵ月後の彼の誕生日に分かった。


その日、私は誕生日プレゼントを持って待っていた。
早く来ないかな―と。
だが、その日に限って彼は遅かった。
彼が来たのは、もう翌日になろうとする少し前だった。
やってきた彼を連れて、空中庭園へと向かう。

「遅かったね・・・」
着いて、私は彼に言う。
「あぁ・・・悪い・・・」
彼は、申し訳なさそうな顔で私を見た。
それにニッコリと笑って良いということを伝える。

「はい。・・・日付変わる前だけど・・・誕生日おめでとう・・・」
そう言って、彼に包みを渡した。
彼は包みを開く。

「これは・・・ペンダントか・・・?」
中身はペンダント。
プレートには私の名前。
実は、これには意味があるのだけど、彼には告げない。
今は言わない。
「うん・・・男の子って何が良いのか分からなくて・・・気に入らなかった?」
ごまかすように、控え目で言った。
「・・・いや、ありがとな」
言ってすぐに着けてくれた。
「ううん。・・・似合ってるね」
「・・・桃・・・」
名前を呼ばれて驚いた。
その声が切なげだったからかもしれないけど―

「なに?」
「俺・・・今日で、此処に来れない事になった・・・」


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