第6話[国渡り]

ウルサ国。
サエティ国の隣に位置するこの国も、栄えるている国だ。
それはサエティ国にも劣らないほどだった。
国の中心にある城に向かって馬車を走らせる、サエティ国第一王女の桃は緋真に貰った『史郎くん』のプロフィールを読んでいた。
誕生日も不明、学歴も不明、親も不明なそのプロフィールに多少の疑問を持ちつつ読む。
彼はずっと孤児院で育てられ、『氷雪地方警察庁』の警察本部長に引き取られたらしい。
しかも彼は一ヶ月前に『氷雪地方警察庁』の警備部部長に史上最年少で就任した天才児らしい。
その才能を見込まれて、城の警備の任に就くことが決まった、と書かれていた。
年齢はどうやら桃と同じらしく、桃はすごい子もいるもんだと感心してしまった。

「桃姫様、到着いたしました」

騎手から声がかかる。

「ありがとうございます」
「さぁ桃様降りてください」

同行しているルキアがドアを開ける。

「王妃様から頂いた書類を読んでいたようですが」
「ええ。今度の誕生式典で案内することが決まった警察官の方のプロフィールを読んでいたの」
「えっ!?」

その話にルキアは驚いたような声を上げる。

「どうかしましたか?」
「いえ。では私はサエティ国に戻ります。城に他の執事がいると思いますので、その方とご一緒してください」
「分かりました」
「夕方にはお迎えに参りますので、それでわ」

ルキアは馬車に乗る。
そして馬車はサエティ国のほうへ走り出した。

「さてと・・・」

桃は城のほうへ歩みを進めた。

「ようこそおいで下さいました。桃姫様」

城の玄関には門番がいて、桃に挨拶をする。

「お邪魔します」
「はい、少しお待ちください。恋次殿お見えになりましたよ!!!!!!」

そう門番が声をかけると、恋次が急いで出てきた。

「おお、桃姫。待ってたぜ」
「・・・・・・・・・・・・」
「さ、挨拶に参りましょう。・・・て、どうかしました?」
「阿散井くん、なにしてるの」

桃は呆れた感じで言う。

「あ、阿散井!?それは一体・・・」
「はは・・・桃姫冗談キツイゼ。俺は『恋次』だろ?」
「そうですよね。阿散井なんて・・・」
「はい。それじゃあ桃姫行きましょう」

そう言い、桃を城の中に入れる。
門番と別れたあと、恋次は桃に耳打ちで伝える。

「おい!!!俺のことは『阿散井』じゃなくて『恋次』って呼べって言っただろ」
「だって阿散井君は阿散井君だもん」
「あのな、いくら同じ学校行ってた同級生だからって」
「それしか印象無いもん」
「お前、ルキアのことは『朽木』とは呼ばねぇじゃねぇか」
「それは慣れたもん」
「おいおい」

実は桃と恋次とルキアは同じ学校に通う同級生だったのだ。
この国では小学校は王族でも普通に通うことになっているのだ。
まぁそれなりに貴族が行くような学校に行くのだが。
その時に恋次とルキアと出会ったのだ。
特に恋次とは6年間同じで、相談相手になってもらったりしていた。
桃が2人と親しいと知り、彼らを執事として城に王が招いたのだ。

「てか、今日のお供って」
「俺だ」
「えっ!?お父様専属じゃなかったの!?」
「いやぁ・・・なんか今日は桃姫のほうについて欲しいって頼まれたんだよ」
「ふーん・・・」

それを聞いて怪しいという目で恋次を見る。

「とにかく!!!王様達の前ではちゃんと『恋次』と呼べよ?」
「分かってます」

そう言いながら桃はさっさと歩いていった。
本当に分かってるのかな・・・、と思いつつも恋次は桃の後を追いかけた。


+あとがき+
ウルサ国に着いたにも関わらず、誰も出てこないという話。
史郎くんのことを前半でちょっとだけ触れましたが、謎だねまだまだ。
こうやって小出しにしていきます。
次回こそ、ウルサ国サイド出てきます。


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