第5話[家族3人が会う時]
12時まであと10分。
桃は食堂場の入り口に来ていた。
早かったかな、と思いつつもドアの外で待つ。
久しぶりに両親に会えるのだ。
こうして、公務以外で会えるのはほとんど無い。
いくら娘でも、許可がいるのだ。
しかも王室でしか会えない。
周りには沢山の執事達。
家族水入らずで会えるのは本当に少ないのだ。
「桃」
その声に驚いて振り返る。
「お父様!!!」
父である白哉が声をかけてきたのだ。
「元気そうね、桃」
「お母様!!!」
母の緋真も後ろから顔を出す。
「久しぶりだな」
「お久しぶりです、お父様」
「中に入って話をいたしましょう」
「はい、お母様」
3人は食事場へ入る。
さすがにメインの食事場だけにかなり広い。
広いのは、ここでパーティを行うためである。
「さぁ座りなさい」
白哉は3人用の丸いテーブルを見つけ、その一つのいすに腰掛ける。
緋真も腰掛ける。
「桃もいらっしゃい」
「はい」
そして桃も空いている椅子に腰掛ける。
「桃、明日のことなんだが」
「明日、ですか?」
「ウルサ国に行き、王様たちと面会してきなさい」
「え、私ですか?」
「そうよ、もうすぐ貴方は15歳になるのですよ。しっかり挨拶をして参りなさい」
「はい・・・」
桃は少し嫌な公務だが、それを引き受ける。
「それと、誕生日の日のことなのだが」
白哉は料理の置く場所を指示しながら言う。
「はい」
「今年で15歳だ。毎年のことだが誕生式典を開こうと思う」
「はい・・・」
「そのとき、ここの構造を良く知らない警備員が来るので、城の中を案内しなさい。・・・大丈夫だ。お前に危害を加えるような奴ではない」
「分かりました。で、そのお方の名前はなんとおっしゃるのですか?」
桃は自分の分の料理を取りながら言う。
「しろうくんだよ」
「えっ?今なんと?」
桃は自分が待つあの人の名前に似ているので、聞き返す。
「史郎くんですよ」
こんな字を書きます、と緋真は史郎のプロフィールを渡しながら言う。
「史郎くん・・・」
桃はプロフィールに目を通しながら呟く。
ああ、この前外で会った男の子か・・・と納得する。
そしてあることに疑問を抱く。
「あの・・・・なんで・・・不明が多いんですか?」
「さぁ?なにか事故にあったかなにかでそうなったんじゃないのだろうか」
「そうですか・・・。分かりました、頑張ります」
「あぁ、頼むよ」
「さぁ料理も来たことだし、食べましょう」
「はい」
3人は食事を摂り始める。
桃との面会を終え、王室に戻った王と王妃は話をしていた。
「鋭いですね、桃は」
「ああ、私も驚いた」
「まぁ、あなたの血は引いてますからね」
「・・・・まぁこれで道は開いた。後は桃次第だ」
王はそう言いながら外を見る。
そこには笑いながらメイドたちとお茶をする桃の姿があった。
運命の歯車が廻り始めた。
+あとがき+
いろいろ動いた5話。
ここからさらに話が動きます。
史郎君の謎がさらに深まってますが、これからちゃんと解き明かしていきます。
次回はウルサ国へ
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